脳は、人間の身体全体をコントロールしている、最も重要な臓器です。そんな脳の正常な働きを、ストレスが妨げているという事実をご存じですか?前編では、まず脳の機能について学習しましょう。
ミーティングでのプレゼン中や、提出用のレポートを書いている時、または友人との会話の途中などで、突然伝えたい言葉が見つからなくなり、四苦八苦したご経験はありませんか?あるいは、読書中にしばらくの間ずっと同じページを読んでいるにも関わらず、何も頭に入ってこないと感じることなども然りです。
これらは、頭が良い悪いに関わらず、誰にでも起こりえることです。運の悪いことに望まないタイミングで、しかも頻繁に経験される方も多いことでしょう。では、一体何故そうなるのでしょうか?
現時点では、まだ詳しい原因は解明されていません。「頭がぼうっとしている状態」や「脳疲労」には、睡眠不足、食生活の乱れ、 環境毒素、身体活動の低下などの理由が考えられます。言い替えれば、脳機能全般は様々な要因からくるストレスの影響を受けていると言えます。
ここで、そのメカニズムを詳しく見ていきましょう。
脳の素晴らしさ
人間の脳はコンピューターのようなものです。もちろん、文字通りの意味ではありません。人間の脳はコンピューターよりもはるかに複雑です。しかし、そう考えると脳内で起きている事象が理解しやすくなります。例えば人間の脳には、以下のようなコンピューターと類似した特徴があります。
- 情報を管理します。(すなわち、五感を通して情報を収集し、与えられた状況にどう反応するか身体に伝えます。)
- 各機能に特化した構造の集合体です。(図を参照)
- 短期記憶と長期記憶の両方の機能を持っています。
- 緊急の課題に対応する能力を有しています。
- 各器官系の基本的な機能(呼吸、くしゃみ、心拍の調節など)を司っています。コンピューターとは違い、日常の行動によって柔軟に形が変化します。
- 機能するためにエネルギー(食物由来の炭水化物やたんぱく質、脂質)を必要とします。
ストレスと脳の機能
前述したように、ストレスは正常な脳の働きを妨げる要因の一つと考えられています。しかし、なぜでしょうか?
多くの皆さんは、中学や高校の生物の授業で、人体の基本構造を学習されたと思いますが、それはこのような内容ではありませんでしたか?
- 人体は37兆個の細胞でできています。
- 細胞は集まって組織を形成します。
- 体組織は臓器をつくります。
- 臓器が組み合わさって器官系となります。
- 器官系が共存しているのが人体です。
人体の構造がわかったところで、身体の様々な機能について話を移しましょう。ここで登場するのが、ホメオスタシスという、体内環境を一定に保つために全身に備わっている重要な機能です。 人間が、多様な食生活や生活環境下であっても生存できるのは、ホメオスタシスのおかげです。キーワードは「適応力」。細胞は特定の条件下(温度、利用可能な栄養素、水分バランスなど)でのみ機能するため、人体にはその条件をキープするための仕組みが備わっています。体内環境を一定に保つことで、細胞の働きも安定し、臓器や器官系が本来の機能を果たせるのです。